「作れる人」が広がる時代の専門家の役割
専門のエンジニアでなくても、業務の担当者自身がアプリや仕組みを組み立てられる——いわゆる市民開発の考え方が広がっています。ローコードやノーコードの道具が整い、現場の人が自分の困りごとを自分で解決できる場面が増えました。一見すると専門家の仕事が減りそうですが、実際にはそう単純ではありません。
現場の人が手軽に作れる範囲が広がるほど、その先の「難しい部分」や「作ったものが増えすぎて収拾がつかなくなる問題」への対応が必要になります。専門家の役割は、すべてを自分で作ることから、現場の自作を支え、整えることへと移りつつあります。
基幹システム刷新という大きな流れ
多くの企業が、長年使ってきた基幹システムの刷新という重い課題を抱えています。老朽化した仕組みを、より柔軟で変化に対応しやすい形へ作り替える。この大掛かりな取り組みには、市民開発の道具も組み合わせて使われるようになっています。ここに、フリーランスの専門家が関わる余地が大きくあります。
刷新は、単に新しくするだけでなく、業務のやり方そのものを見直す機会でもあります。技術に詳しいだけでなく、業務の流れを理解し、どこを自動化しどこを人が担うかを一緒に考えられる人が、こうしたプロジェクトでは重宝されます。
現場の自作を「支える」立ち位置
市民開発が広がると、専門家には新しい立ち位置が生まれます。現場の人が作ったものが安全か、無駄に重複していないか、後で困らない形になっているかを見て、必要なら整える。いわば、現場の自作に伴走するコーチのような役割です。
この役割は、上から管理するのではなく、現場の力を引き出す姿勢が求められます。相手の作りたい気持ちを尊重しつつ、危ういところをそっと支える。技術力に加えて、こうした関わり方ができるフリーランスは、市民開発の時代にこそ必要とされます。
手を動かす力と、全体を見る力の両輪
作れる人が増える時代でも、自分で手を動かせる力の価値がなくなるわけではありません。むしろ、難しい部分を引き受けられる確かな実装力は、これまで以上に希少になります。同時に、全体を見渡して整える力も求められる。この両輪を持てる人が、次の時代の中心にいます。
どちらか一方に偏るのではなく、深い技術力と、広い視野の両方を少しずつ育てていく。市民開発の広がりは、専門家の仕事を奪うのではなく、その役割をより高度なものへと押し上げているのです。その変化を、脅威ではなく機会として捉えたいところです。